「下山静香の おんがく×ブンガク」で安吾

 今週末の4月14日(土)14時から、渋谷「l’atelier by APC(ラトリエ バイ エーピーシー)」というところで、〈「下山静香の おんがく×ブンガク」vol. 1 〜異端のシンパシー 坂口安吾をめぐって〜〉というイベントが開催されます。
詳細はこちら→裸足のピアニスト・下山静香のブログ 2018-03-16
 ピアニスト下山静香さんによるサティ、ラモー、ドビュッシー安吾を題材に作曲された新曲などの演奏が中心で、インタビュー対談のコーナーでは、いつも烏有本「シリーズ 日本語の醍醐味」でお世話になっている七北数人さんがゲスト出演されるそうです。
 リンク先の下山さんのブログには、

第1回は・・・
やはりというべきか?!僭越ながら一番身近な存在と言ってもよい坂口安吾
安吾好きのかたもそうでないかたも、『堕落論』なら読んだことあるというかたもまったく知らないかたも、近藤ようこさんの漫画なら読んだことあるというかたもそもそも漫画は読まないというかたも、「サティっていいよね」と思うかたも「サティってクラシックなの?」と思うかたも・・・
要するに、どんなかたでもお楽しみいただけるような熱いサロンにしたいと思っております

とあります。面白そうですねー。
 七北さんのお話では、まだ申し込み可能とのことなので、私も聞きに伺おうかなーと思っています。ご興味のある方はぜひ。

『いんてる』

 先日、知人から日本校正者クラブの機関誌『いんてる』第144号(2017.3)をいただきました。

 『いんてる』という誌名がとてもいいですよね。活版印刷で使われるインテルは、行間に挟む金属や木製の込め物のことなんですが、しっかり活字を支えながらも決して印刷されることのないインテルと、表舞台に立つことなく陰で活字(文字)を支えている校正者を重ね合わせた誌名。
 いちおう私も校正技能検定4級(今でいう中級かな?)はもってるんですが、前職時代、校正のプロ中のプロである野村保惠先生の本を編集しているとき、「私の校正なんてザルですよ」と言ったところ、先生から「ザルってのはまだ引っ掛かる網があるだろ、君の校正はワクじゃないの?」と言われて凹んだことがありました。。。
 この『いんてる』のなかに、織田太郎さんという方が書いた「タイポグラフィと校正」という文章があり、むかし私が編集した本『『印刷雑誌』とその時代』が出てきました(なるほど、これがあったから知人は『いんてる』を私にくれたんだ、と納得)。

 「その時代」の中の高岡重蔵さんと高岡昌生さんの文章、「(タイポグラフィとは)内容や用途に合わせ読みやすく美しく文字を並べること」等を引きながら、読者の読みやすさを意識することは「校正者の仕事と実はつながっていたのだ」と書かれていました。
 『いんてる』、とても楽しい冊子です。新富町の印刷図書館や千代田区千代田図書館でバックナンバーが読めたはず。ぜひ足を運んでみてください。


追記:
『いんてる』第144号、先に引いたもの以外にも面白い文章が、仕事として校正も請け負ってる身としては、涙がちょちょぎれる(死語?方言?)ような沁みる言葉もたくさんありました。
 「本の読みやすさの要諦は、読書の停滞を招かないこと。読者が一瞬でも「ん?」と立ち止まる箇所があれば、校正ミスである。誤植はもちろん、おかしな文字づかいや不自然な組み方などがあれば、校正者の顔が浮かぶ」(服部宏「校正の極み」)とか、冷や汗が出てきます。
 ケッサクだったのは、講義でルビの組み方についてさんざん課題をこなしたあと、最後に先生が言ったという一言、とにかく「(振り仮名が)まちがっていなければいい」(田村和子「出合いに導かれて」)。思わずズッコケますよね。でもやっぱりこれが一番大事なんだなあ。ルビの誤植、私も見落としたことがあります……。

高岡重蔵先生の思い出の会

 2月3日、印刷博物館トッパン小石川ビル)2階の小石川テラスで、「高岡重蔵先生の思い出の会」が開催されました。(以下のカラー写真は嘉瑞工房の高岡昌生さんからご提供いただきました)

 会の詳細は「高岡重蔵先生の思い出の会」のご案内で告知されていますが、

各位 去る平成29年9月15日に嘉瑞工房 高岡重蔵さんが永眠されました。そこで生前親しくさせていた私達で「高岡重蔵先生の思い出の会」を企画致しました。発起人一同
平成29年12月
発起人:代表 河野英一(デザイナー、ロンドン在住)
葛西薫(デザイナー)、小林章(タイプディレクター、ドイツ在住)、立野竜一(デザイナー)、上田宙(烏有書林)、宗村泉(印刷博物館)、藤松瑞恵(デザイナー)、宮後優子(編集者)、田代眞理(翻訳家)、上島明子(美篶堂)
家族代表 高岡昌生

ということで私も発起人の一人に加えていただいたことから、会に参加をしてきました。
 当日は重蔵さんに縁のある方120人以上が集いました。

 重蔵さんの一番弟子でこの会の発起人代表・河野英一さんがはるばるイギリスから駆けつけたのをはじめ、ドイツからは小林章さんも。
 発起人が中心になって思い出を語っていったのですが、ほんとうに話が尽きることなく、他の参加者の方々のお話を聞く時間がほとんどとれなかったのが残念なぐらいでした。

 会場の一角には、河野さんが贈ったステッキや、重蔵さんの誕生日に毎年立野さんが贈っていた版画作品なども飾られました。

 そして、重蔵さんご本人の活版印刷作品もたくさん。すべて『高岡重蔵 活版習作集』に掲載した作品の「実物」です。

 私は、参加者のみなさんへのお土産として、重蔵さんの96年分の年表をつくりました。
 年表を見ていて気づいたのですが、2015年にヘルマン・ツァップさんが96歳で亡くなり、その2ヵ月後に重蔵さんが入院。そして昨年9月15日、重蔵さんもツァップさんと同じ96歳で逝去。お二人の縁というか、絆を感じざるをえないですよね。
 重蔵さんが好きだったトーマス・キャンベルの詩の言葉、To live in hearts we leave behind / Is not to die.(志を継ぐものがいれば 死んだことにはならない。Hallowed Groundより)を胸に、これからも私自身、重蔵さんのように生涯学び続けつつ、重蔵さんから頂いた色んなこと、ちゃんと次の世代にも伝えていきたいと思います。
 重蔵さん、本当に、本当に、ありがとうございました。


東大生協・書籍部でフェア中

 文京区本郷にある東大生協・書籍部で「小さな出版社の丁寧な仕事」というフェアを開催中、と八木書店の方から教えていただき、さっそく行ってきました。

 平台の反対側はこんな感じです。

 烏有本もほぼ全点、近々最新刊も並ぶと思います。
 お隣には書肆汽水域さんの新刊『落としもの』や景文館書店さんの「吉田知子選集」などなど、面白そうな本がズラッと並んでいます。

 で、なんと、長らく版元品切中の『高岡重蔵 活版習作集』が2冊もありました! 一瞬、買い占めてヤフオクに出そうかなんて不届きな考えがよぎりましたが、さすがに自制しました。

 担当の方がいなかったのでこのフェアがいつまで続くのか聞けませんでしたが、あまり書店さんで見ることのできない本の数々、このチャンスにぜひ。あ、近くで白水社国書刊行会のフェアもしてましたよー。

書店がたくさん……

 新刊を出すときには、いつも全国の書店さん数百軒に新刊案内Faxを送っています。今回、久々にFaxを送信したんですが、「現在使われておりません」が40軒以上も。。。約2年でたくさんの本屋さんが閉店していました。
 そして今日も、 ジュンク堂書店梅田ヒルトンプラザ店が2/28で閉店とのお知らせが(いまならまだ、金子光晴『老薔薇園』、藤枝静男『田紳有楽』、そして『俳人風狂列伝』でいま話題!?の石川桂郎『剃刀日記』が並んでいます。ぜひヒルトンプラザ店でご購入を!)。
 岩波ブックセンター信山社の閉店もショックでした。他にも、リブロ池袋店、紀伊國屋新宿南店、ちょっと前ですがジュンク堂新宿店や書原新橋店も、もうないんですね。たまに立ち寄るのが楽しみだった書店さん、名前を挙げていくとキリがありません。
 あと、2/28には(すみません。2/20でした)代々木上原の幸福書房も閉店してしまうようです……。幸福書房は、うちの売れない本を置いてもらうと迷惑になるんじゃないかと遠慮して営業したことはなかったんですが、『高岡重蔵 活版習作集』が並んだときには嬉しくて……。大昔、小田急線沿いに住んでいたころ、ときどき途中下車して立ち寄っていました。いいお店です。私にとっては、入口から入って突き当たりのといめんの棚が、とくに圧巻でした。けっして大きなお店じゃないのにこんな渋くて固い本がこんなに、という、なんというか、覚悟を感じる棚でした。
 一方で、うちの新刊を(図書館関係を除いて)数十冊単位で一番多くとってくれたのが某ネット書店さん。微妙なわだかまりを感じつつ、昨日出庫手配を依頼しました。とにかくたくさん売れてほしい、でも、売れてほしいお店っていうのも、あるんですよね。そういうお店がなくなっちゃうのは、やっぱり悲しい。それでも、どこでもいいからたくさん売れてほしい……。う〜ん。

『廃墟の眺め』まもなく発売

 新刊、吉行淳之介『廃墟の眺め』の取次店用の見本が届きました。

 とても端正な、いい本に仕上がったように思いますが、いかがでしょう。
 本納品は来週、23日に八木書店さん、24日に各取次店さんに入る予定なので、来週後半あたりから書店店頭に並び始めます。ぜひお手にとってご覧ください。で、願わくはご購入を!

 →烏有書林の本があるお店(リアル&ネット)