三省堂書店でエスプレッソ

 三省堂書店神保町本店で書籍のオンデマンドサービスが始まったというので見にいきました。
 オンデマンド印刷機製本機を組み合わせたもので、和書に関してはリストの中から選んだものがその場でプリントされ製本されて出てくるというもの。洋書は「「Googleブックスアーカイブス」200万点と海外の学術書など100万点を気軽に入手できます。」とのこと。詳しくは公式ブログのインフォメーションとか写真解説ページで。

 最初、私が想像していたのは、KindleiPodを持っていって(もしくはその場で電子書籍を購入して)「これを本にしてください。本文は老眼の親父用に15ポイントで」とか言うと、コーヒーを飲んでるうちに電子書籍を自動で組版・印刷・製本してくれる、というものでした。
 ところが実際に担当の方に聞いてみると、和書の元データはPDFで講談社から支給されているもののようで、大活字本用のデータもPDFなので文字の大きさは変えられないとのこと。要は「簡易製本機が働いているのをその場で見られます」みたいなものでした。
 せっかくなので1冊注文してその場で作ってもらいました。和書のリストはまだ60冊程度と少なく、これだ!ってのがなかったのですが、たまたま手に取ったサンプル本の序文に高校の大先輩である中平穂積さん(面識はない)の名前を発見して、『ジャズ喫茶「ベイシー」の選択』(菅原正二、講談社オンデマンドブックス)というのにしました。
 この機械、どういう仕組みかというと、富士ゼロックスのモノクロ小型オンデマンド印刷機(粉体トナーを使ったレーザ・プリンタ)で本文を表裏に1ページずつプリントしたものを重ねて背を接着剤で固め、それをエプソンのインクジェットプリンタでプリントした表紙で包んでから三方裁ちするというもの。本文の丁合、背固め、表紙包み、三方裁ちをアメリカのオンデマンドブックス社が販売する「エスプレッソ・ブック・マシーン」とかいう機械で行うのですが、ボディがスケルトンになっていて製本の様子を見ることができます。このへんは、機械好きには嬉しいサービスですね。
 実際にできた本を見ての感想は、もう一歩、という感じかな。せっかく名前がエスプレッソなんだから、カラーレーザプリンタ電子書籍用データを組み合わせて、お客さんの好みのトッピング(文字の大きさや表紙の柄、カラーページ対応とか)で作れば、もっと新味が出たように思う。iGen4とかIndigoを使えばカラー品質も十分だろうし。でも、テキストさえ読めればいい、という感覚なら今のままでも十分かも。
 といっても、「テキストさえ読めればいい」路線だと、そのうち電子書籍に負けてしまうでしょう。電子書籍が普及することを前提の上で、潔くそれのプリント・製本サービスに特化してしまったほうが有効な気がする。個人利用のお手伝い、が通ればの話だけど、BOOKSCANの逆パターンで、電子書籍は買ったけどやっぱ紙で読みたい、という人向けに、「電子書籍をその場で市販の書籍よりも安くプリント・製本します」とか言えば、結構需要があると思うんだけどな〜。でもしがらみの多い新刊書店さんでは、やっぱり「市販の書籍よりも安く」は無理かな……