坂口安吾『アンゴウ』


アンゴウ ──シリーズ 日本語の醍醐味(1)
坂口安吾
「私は生き生きと悲しもう。」(「ふるさとに寄する讃歌」より)
ほとばしる才気、あふれ出る詩情、青い安吾がここにいる。
 坂口安吾の詩情あふれる初期の作品を中心に、これまであまり単行本に収録されてこなかった、埋もれた名作・佳作を集成。
 散文詩を思わせる言葉の連なりが美しい「ふるさとに寄する讃歌」を皮切りに、狂気をはらむ親友の死を描いた「長島の死」、壮絶な恋愛小説「花火」、ユーモラスなどんでん返しが鮮やかな「無毛談」、妻と親友への疑心が意外な結末へとつながる感動の名作「アンゴウ」、安吾流ファルスの到達点ともいえる「保久呂天皇」など、29作品を収録した。
※七北数人氏を監修者に迎えた「シリーズ 日本語の醍醐味」は、“ハードカバーでゆったり、じっくり味わって読みたい日本文学”をコンセプトに、手に汗握るストーリーではなく、密度の濃い文章、描写力で読ませる作品、言葉自体の力を感じさせる作品を集成してゆきます。
2011年12月20日発行 四六判・上製 336ページ
定価2310円(本体2200円) ISBN978-4-904596-02-9

 目次などの詳細は烏有書林:『アンゴウ』坂口安吾で。

 こんな内容ですが、いかがでしょう?
 かなりの安吾ファンでもないかぎり、あまり見たことのない作品が並んでいると思います。
 七北数人氏の「解説」には、

 代表作しか知らないという幸福な(これから楽しめる!)読者は、まず本書の表題作「アンゴウ」と「無毛談」とを読んでみてほしい。同じ一九四八年五月に発表された二作で、共にあっと言わせるどんでん返しが効果的に仕組まれている。読後あたたかな火が胸にともる。安吾がいかに小説づくりが巧みで、しかも心やさしい作家だったかがよくわかるだろう。文章も読みやすい。人をいとおしむ気持ちが端々ににじみ出て、切なくなる。
(中略)本書には、若き日の青々とした安吾作品が数多く収められている。ここにあるのは若者通有の純真な苦悩であり、遠い人生の果てを見つめて身悶えする歓喜と不安である。

とあります。
 「白痴」「堕落論」「桜の森の満開の下」といった脂の乗り切ったころの安吾もいいですが、恋愛や将来の不安に苦悩する、繊細でどんくさい、まだ青い安吾の意外な姿がここにはあります。
 ズバズバと世相を斬ってゆく威勢のいい安吾しか知らない人にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。→烏有書林の本があるお店(リアル&ネット)

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