「エリック・ギルのタイポグラフィ 文字の芸術」展

 昨年12月17日から1月29日まで、多摩センターにある多摩美術大学美術館で「エリック・ギルのタイポグラフィ 文字の芸術」展が開かれています。
 ここで紹介しようと思っていてすっかり忘れていました。


 多摩美術大学のHPから

エリック・ギルのタイポグラフィ 文字の芸術
THE TYPOGRAPHY OF ERIC GILL : Legendary Letterforms


 エリック・ギル(Arthur Eric Rowton Gill, 1882-1940)は、石彫100点、碑文750点、木版画1,000点におよぶ膨大な作品と、美術工芸や社会改革に関わる約300点の著述を残した、20世紀英国を誇る芸術家です。
 女性の豊かな裸体を表現した彫刻、私家版の書物を飾った神々の挿絵、古代ローマのアルファベットを蘇らせた石碑文は、いずれもギルの手によって描かれた神秘的な曲線美をもっています。敬虔なカトリック信者である一方でタブーをこえる奔放な感情を貫き、手工芸思想を追い求めながらも産業化の波にのまれてゆく宿命は、矛盾に満ちた20世紀における表現者の喜びと苦悩を体現する姿そのものです。アーツ&クラフツ運動の精神を継承した芸術家のなかでも、ひときわ異彩を放っているといえるでしょう。
 そのようなギルの創作活動のなかで際立つのが、文字の造形を芸術の域にまで高めたレタリングとタイポグラフィの才能です。たとえば、1920年代末にギルが設計した活字書体《Gill Sans》は、第一次世界大戦前からギルが手掛けてきた数百枚の石碑文の結晶であるとともに、幾何学的な構造を取り入れて大量生産に対応するための工業製品でもあり、文字の伝統美に現代の合理性を調和させた、20世紀タイポグラフィの傑作といえます。ペンギン・ブックスやロンドン北東鉄道(LNER)、英国放送協会BBC)の公式書体をはじめ汎用活字書体として広く使われ、以後のグラフィックデザインに与えた影響の大きさははかり知れません。
 この展覧会は、ギルが携わった文字の造形を中心とした作品の中から、ドローイングや版画、書籍、書体見本帳を含む約200点を展示します。巨匠の手がつくり出す文字の造形美を一覧することにより、現代におけるタイポグラフィの意義を考えます。


 展示会の見どころなど、詳細は多摩美術大学のHPエリック・ギルのタイポグラフィ展で。

 私は昨年末に行ってきましたが、どれもこれも圧倒されるような美しい作品ばかり、書体の製作過程がわかる資料も豊富で、素晴らしい展示会でした。
 とくに「ヘイグ&ギル印刷所の木活字印字見本」には見入ってしまい、しばらくそこから離れることができませんでした。
 初期のカリグラフィ作品にはエドワード・ジョンストンとそっくりな字があったりして、やっぱり師弟なんだなあ、と改めて感じたり。

 あと10日ほどで終わってしまいますので、まだ見ていない方はお急ぎください。