『Typography 09』誌に記事を書きました

 まもなく発売の『Typography 09』(グラフィック社)に、組版について記事を書きました。「これだけは知っておきたい組版の常識・非常識」というコーナーで、嘉瑞工房の高岡昌生さん、コン トヨコさんと分担して、私は和文編と和欧混植編の一部を担当しました。
 『Typography 09』の特集は「美しい本と組版」で、

書籍の本文組版について、ブックデザイナー、老舗出版社、組版会社を取材し、それぞれの組み方を紹介。本文組版をする際、どのような点に気をつけたらよいか、基本的な考え方とInDesignの設定を解説。書体会社10社100書体の文字組見本を掲載した付録小冊子つき。

とのこと。目次は Latest Issue – Typography で。


 先月、青山ブックセンター本店で開かれた TypeTalks 第35回「ヨーロッパの美しい本と組版」では、ドイツ在住のタイポグラファである麥倉聖子さんが話をされたんですが、その中で特に印象に残った言葉が、 “マクロ・タイポグラフィ” と “マイクロ・タイポグラフィ” でした。
 ざっくりいってしまうと、マクロ・タイポグラフィとは、文字をどこにどうレイアウトするか、といったパッと見でわかるデザインのこと。一方のマイクロ・タイポグラフィとは、ひと文字ひと文字をどう並べていくか、といった組版寄りのデザインのこと。
 欧米ではよく使われる用語らしいのですが、私は初めて知りました。文字を扱うという部分では同じなんだけど視点が違う、という両者の違いがとてもわかりやすい表現なので、日本でも広まってほしい言葉だな、と思います。
 麥倉さんは、日本のデザイン系の学校では、マクロ・タイポグラフィは詳しく教えても、マイクロ・タイポグラフィはほとんど教えていないのではないか、とおっしゃっていました。たしかに、社会に出て初めて “組版” というものに遭遇した、というデザイナーさんも多いようです。もともと組版は印刷会社が担っていた職分だからかもしれませんが、でも、いい本をデザインする上では、欠かせない要素ですよね。


 今日、できたてホヤホヤの『Typography 09』の見本誌をいただいて、ひと通りざっと読んだところなんですが、今号はこのマイクロ・タイポグラフィに焦点を当てた内容なので、収録されている図版も、パッと見は同じような本のページの写真が続いているように見えます。それも、良いものだけを選んで掲載しているので、ひと目で「うわっ、ひどい!」とわかるような例がないぶん、個々の違いがとても微妙(繊細?)なんですよね。でも、よくよく細部を見ていくと、それぞれに個性があることがわかってきます。
 一見、地味なんだけど、本をつくる上で、とても大切なことが載っている雑誌だと思います。ぜひご一読ください。


5/20追記
 マクロ&マイクロ・タイポグラフィについては、麥倉さんのブログ Shoko Mugikura | Just Another Blog にもっと正確で詳しい説明がありましたので、ぜひご覧あれ。記事はこちら→マクロ・タイポグラフィとマイクロ・タイポグラフィ