『いんてる』

 先日、知人から日本校正者クラブの機関誌『いんてる』第144号(2017.3)をいただきました。

 『いんてる』という誌名がとてもいいですよね。活版印刷で使われるインテルは、行間に挟む金属や木製の込め物のことなんですが、しっかり活字を支えながらも決して印刷されることのないインテルと、表舞台に立つことなく陰で活字(文字)を支えている校正者を重ね合わせた誌名。
 いちおう私も校正技能検定4級(今でいう中級かな?)はもってるんですが、前職時代、校正のプロ中のプロである野村保惠先生の本を編集しているとき、「私の校正なんてザルですよ」と言ったところ、先生から「ザルってのはまだ引っ掛かる網があるだろ、君の校正はワクじゃないの?」と言われて凹んだことがありました。。。
 この『いんてる』のなかに、織田太郎さんという方が書いた「タイポグラフィと校正」という文章があり、むかし私が編集した本『『印刷雑誌』とその時代』が出てきました(なるほど、これがあったから知人は『いんてる』を私にくれたんだ、と納得)。

 「その時代」の中の高岡重蔵さんと高岡昌生さんの文章、「(タイポグラフィとは)内容や用途に合わせ読みやすく美しく文字を並べること」等を引きながら、読者の読みやすさを意識することは「校正者の仕事と実はつながっていたのだ」と書かれていました。
 『いんてる』、とても楽しい冊子です。新富町の印刷図書館や千代田区千代田図書館でバックナンバーが読めたはず。ぜひ足を運んでみてください。


追記:
『いんてる』第144号、先に引いたもの以外にも面白い文章が、仕事として校正も請け負ってる身としては、涙がちょちょぎれる(死語?方言?)ような沁みる言葉もたくさんありました。
 「本の読みやすさの要諦は、読書の停滞を招かないこと。読者が一瞬でも「ん?」と立ち止まる箇所があれば、校正ミスである。誤植はもちろん、おかしな文字づかいや不自然な組み方などがあれば、校正者の顔が浮かぶ」(服部宏「校正の極み」)とか、冷や汗が出てきます。
 ケッサクだったのは、講義でルビの組み方についてさんざん課題をこなしたあと、最後に先生が言ったという一言、とにかく「(振り仮名が)まちがっていなければいい」(田村和子「出合いに導かれて」)。思わずズッコケますよね。でもやっぱりこれが一番大事なんだなあ。ルビの誤植、私も見落としたことがあります……。