皆川博子『ペガサスの挽歌』


ペガサスの挽歌 ──シリーズ 日本語の醍醐味(4)
皆川博子
「激しく、罰せられている。私は、罰せられている。」(「黄泉の女」より)
燦爛たる幻想。自由への憧れ。性の冒険。狂気と孤独。貴重なデビュー前の児童小説を含む、待望の1970年代単行本未収録作品集。皆川文学誕生の秘密がここにある。
 「私の中に巣喰う狂気が、さまざまな夢を見させる。文字に定着してしまえば、未だ寒々と貧しい世界。いつか華麗な狂気の世界を、文字の上にもあらわしたいと、一枚、二枚、書きつづけています」
 小説現代新人賞受賞の言葉でそう語った皆川博子は、初めから、恐ろしいほどに完成されていた。同人誌発表のシュールな詩のような児童文学4篇を含む、単行本未収録作品12篇を収録。皆川文学の妖美な特色は、むしろ未収録とされた作品のほうに色濃くあらわれている。

※七北数人氏を監修者に迎えた「シリーズ 日本語の醍醐味」は、“ハードカバーでゆったり、じっくり味わって読みたい日本文学”をコンセプトに、手に汗握るストーリーではなく、密度の濃い文章、描写力で読ませる作品、言葉自体の力を感じさせる作品を集成してゆきます。
2012年10月10日発行 四六判・上製 352ページ
定価=本体2,400円+税 ISBN978-4-904596-05-0


【目次】
初期児童文学作品
 花のないお墓
 コンクリ虫
 こだま
 ギターと若者
地獄のオルフェ
天使
ペガサスの挽歌
試罪の冠
黄泉の女

家族の死
朱妖

解説/七北数人


 皆川博子氏について、ここで改めて紹介する必要もないでしょう。
 1986年に『恋紅』で直木賞受賞、1998年には代表作『死の泉』で圧倒的な評価を得て吉川英治文学賞を受賞、今年に入っては『開かせていただき光栄です』で本格ミステリ大賞を受賞するなど、ミステリー、幻想小説歴史小説など幅広い分野で、長年にわたり第一線で活躍されてきた方です。
 皆川氏が児童文学作家としてスタートしたことはご存知でも、単行本デビュー前、同人誌時代の作品を読んだことのある人は、ほとんどいないのではないでしょうか? それらを収録したという点だけでも、本書はとても貴重な作品集だと思います。
 しかし、本書の魅力はそれだけではありません。
 七北数人氏は、「解説」でこう書いています。

メジャーデビュー前の幻の児童文学作品四篇と、七〇年代発表の単行本未収録作品のみで構成されたマニアックな編集だが、単なるアウトテイク集でないことは、任意のどの一篇でもいい、読んでみればすぐにわかる。
 長らくお蔵入りになっていたのは、完成度うんぬんとは関係がない。それどころか、七〇年代から現在までに刊行された数多くの皆川作品集の中に混じっても相当上位にランクインしそうな秀作が揃っている。本書を編みはじめた当初、皆川博子はいかにして出来上がったか、という命題を頭に置いていたが、再読三読するうちにそんな命題はすっかり振り落とされてしまった。
 初めから、皆川博子は恐ろしいほどに完成されていたのである。

 皆川ファン必読の一冊です。


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本書の書評・紹介記事

10/4追記

 Amazon紀伊國屋書店BookWeb、Honya Clubなどにも載りはじめ、カート(買い物かご)も開いています。

 でも、できればお近くのリアル書店で買っていただければありがたいです。

 神保町界隈の書店はじめ、紀伊國屋書店の新宿本店と南店にはドド〜ンと積んでいただいております。また、千駄木往来堂書店など、その他のお店にも順次並びはじめているようです。